真空管試験器(TV-7)用双極管測定アダプターの製作

 真空管アンプを製作していると、どうしても多くの真空管を使用します。現在でも、中国やロシ
ア、東欧などで製造がされておりますが、日本製の真空管などは1960年代に製造が終了して
おり、そのほとんどが製造後40年以上を経過しています。まだ、オークションや専門店でそうし
た真空管を手に入れることはできますが、40年間どの様な経緯をたどって自分の手元に着た
のか全く分かりません。実機に取り付けて動作を確認する手もありますが、客観的に良否の測
定ができると非常に便利です。

 そんな際に使用するのが真空管試験機(チューブチェッカー)と言われる測定器です。私は、
2006年夏に手に入れた米軍払い下げの「TV-7」と言う機種を使っています。一度はGmチェッ
カーの自作も模索しましたが、構造の複雑さと使用する部品が手に入りにくい事を理由に断念
しました。

 真空管試験機に関する詳しい情報は、たくさんの方が情報を発信されているので、そちらに
譲りますが、使用していて非常に不便だと思う事がひとつあります。アンプなどの電圧増幅に
使用する「12AX7」などの双三極管の測定をしようとすると、1本当たり10分近くかかってしまう
事です。TV-7は、水銀整流管を電源整流部に使っているのですが、そのウォームアップと、被
測定真空管のウォームアップに最低でも3分はかかるからです。Triode1とTriode2をロータリー
スイッチを切替ながら、測定するにはその倍以上の時間がかかるわけです。

 そんな時に目にしたのが、内尾様のホームページ「ラジオ工房」内の、双三極管用アダプター
の記事です。早速製作に取り掛かることにしました。

 とは、言ってもいくらWeb検索をしても詳しい情報がどおしても出てきません。仕方が無いので
真空管のピン配列をジッと凝視して考えてみる事にしました。MT管の大半は12AU7を代表とす
るこのタイプのピン配列になっています。



 また、シールドを持つ6DJ8や6N1Pなどのタイプはこの様なピン配列になっています。



 9Pinが接続されていない6FQ7などのタイプはこんな配列です。



 ノイズ対策で特殊なピン配列になっているコンピュータ管を除けば全てプレート、グリッド、カ
ソードの接続は同じです。簡単に切替をする事ができそうです。

 MT管だけではなくGT管の6SN7などもよく使用する真空管の一つです。300Bなどの古典出力
管を使う際にはやはりGT管の電圧増幅管が似合いますよね。欲を言えばGT管の測定にも使
用したいものです。

 「TV-7」の測定ソケットですが、それぞれ同じピン番号を使用すれば他のソケットでも測定が
可能です。GT管もMT管よりピンが一つ足りないだけで、アタッチメントを作成すれば、MT管ソ
ケットでも測定可能です。(本当にそんな事をして良いのかは知りませんが・・・)GT電圧増幅管
のピン配列も見てみます。



 さすがにMT管のものとは大きく異なりますが、ジッと見ていて気付く事があります。1〜3ピン
のプレートとグリッドは入れ替わっていますがMT管と同じ場所に配列されています。少し希望
が見えてきました。

 1ピンと2ピンを2回路2切替のトグルスイッチで切り替えます。カソード電極は全て3ピンから
接続とします。MT管とGT管用のヒータの配線をそれぞれ1対1で接続します。簡単に回路図に
するとこんな感じです。左側がMT9プラグ右がMT9とUSソケットです。5分で書いたんでこんなも
ので許してください。


tv7adp.pdf クリックするとダウンロードできます。

 早速部品集めです。そこで思わぬ強敵が見つかりました。MT9ピンのプラグが見つからない
んです。通販のサイトなどあちこち探し回りましたが、見つかるのはえらく高い値段で出品され
ているオークションのものばかりです。結局秋葉原を歩き回ってようやく手にする事ができまし
た。

アルミケース 何処で買ったか型番も忘れました。
USソケット 黒モールド 瀬田無線
MT9ソケット 黒モールド 瀬田無線
5Pラグ板
自前
MT9プラグ
シオヤ無線
トグルSW 2回路6P 5Aだったかと・・・? 瀬田無線
ケーブル
自前
8Pケーブル VCTFワイヤー マルツ

 ケースの加工からです。ほとんど、頭の中の設計のみでいきなり穴あけに入りました。初め
は、MT管用プラグとGT管用プラグを別々に出す予定でしたが、高圧がかかったプラグを裸で
外部に出しておくのも怖い話です。近いうちにショートさせて大切な試験機を壊してしまうのは
目に見えています。結局、MTプラグのみとして余計な穴が一つ増えました。GT管用のプラグ部
品も永遠に部品箱にしまわれることに・・・



 大物の部品を取り付けます。とは言っても3点しかありません。



 後は、頭の中の設計図に従いひたすら配線をします。自分の無謀さにあきれるやら驚くやら



 配線完了の様子です。綺麗とは言いがたいですが、色別に配線して間違えないように努力し
ました。



 プラグの製端をします。結構難しかったです。こんなものでよかったのかな?



 完成です。あまり、格好は良くないですが。



 早速試用してみます。TV-7のロータリースイッチはTriode2側にセットします。(間違えると最
悪の場合、真空管が燃えると思います。気をつけてください。)



 トグルSWの配線が左右入れ違ってしまいました。左がTriode2、右がTriode1になってしまいま
した。後でレタリングしとかないと忘れそうです。GT管も測定してみます。



 全く、異常なく動作しました。測定値もアダプターを使った場合も使わない場合も同じ数値を
示しています。切替用のトグルスイッチに耐圧の大きすぎる物を用意したので、抵抗が非常に
大きく(数十Ωありました。)心配しましたが、問題ありませんでした。これでオペレーションミス
も減りますし、何よりも私よりも歳を取っている試験機をいたわってあげる事ができます。ロー
タリースイッチが一箇所でも壊れたたら直す自信がありません。今後とも重宝しそうです。TV-2
やTV-10でもこのまま使用可能かと思います。


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