低音を求めて改造をする事にしました。今回は、部品にこだわって購入をする事にしました。 書籍等でかじった知識を元に、動作ロードラインの見直しもしてみる事にします。各部のコンデ ンサーも、時定数に注意しながら増量してみる事にしました。はじめにお断りしておりますが、 途中から目的を失い、この先に作る事になるシングルアンプの実験の場になってしまいまし た。 カップリングコンデンサーですが、ビタミンQも良かったのですが、どうも音の曇りが気になっ て仕方がありません。そこで、Nichiconのフィルムコンデンサーに交換する事にしました。高価 なコンデンサーはいくらでもありますが、財布に優しいのも重要な要素ですよね。全体の時定 数を見直して、容量もいじってみます。 ロードラインの見直しをします。まず前段からです。現在のロードラインを引いてみました。 EXCELの計算式に問題があったのかも知れませんし、ELEKITの設計値が実測値の為、理想 像のロードラインにそぐわないのか。マニュアルにある電圧を参考に引いてみたのですが、ど うしても上手くロードラインを引く事ができません。この様なページを残しているのもどうかとも 思いましたが、私の試行錯誤の形跡としてご覧いただけたらと思います。失敗例の塊ではあり ますが、Biasの変更によりどの様な影響が出たかなどは参考になると思いますので、そのまま 残す事とします。実際の動作と異なっておりますが、無理やり引いてみました。 マニュアルでの動作点でのバイアス電圧が1Vとのことなので、どうしても合いません。しかし、 1Vから振幅が1Vあったとするとバイアス0.5V付近まで振れる事になるのでどうしても気に入り ません。グリッド・バイアスが-1Vよりも浅くなると、第1グリッドからカソードに向かって電流が流 れはじめます。そして、グリッド・バイアスが0Vに近づくにつれてこの電流値はどんどん大きくな ってゆきます。この電流のことを、初速度電流といいます。初速度電流は、プレート電圧によっ てかなり影響を受けます。プレート電圧が高ければ、プレートがより強く電子を引き付けるため に、初速度電流は減少するからです。前段の12AX7は、135Vを動作点として動作する為、初 速度電流の影響が少なからずあるのではないかと考えました。 そこで、カソードの抵抗値を変更して基点をずらしてあげる事にしました。1Vの振幅があった として、初速度電流の影響が出始める0.7V以上を使う事を考えて、1.2V〜1.5V程度にする事と しました。カソード抵抗の値を増やして、バイアス電圧をより深くします。2700Ω与えると、1.23V のバイアスを得る事ができました。 すみません。あまりにも昔の事で、どの様に計算したのかいまひとつ記憶があいまいです。 当時のExcelシートをダウンロードできるようにしましたので、興味のある方はご覧ください。 linex7k.xls 続いて、出力管についても検討してみます。元の6L6GCの動作はこうです。私のアンプが、 7581Aに乗せ変えていたので7581Aのデータシートを使用しました。6L6GCと特性は一緒です。 違いは、プレート損失などの定格です。ですので、赤い線(プレート損失)は必要に応じて移動 をさせてください。 球を差し替えることができるようにしている為か、どうも動作に余裕があるように見られます。 B電源電圧が限られているので、動作点を移動させるのは少々難しいのですが、歪を減らす為 にもう少し等間隔で直線的な部分を使いたいものです。現状もVOLを上げていくとある一線を 越えると突然歪が大きくなり音質が突然落ちます。 計算をしてみると、大きな落とし穴に気付きました。確かにプレート損失は余裕がある動作を しているのですが、スクリーン損失が定格ギリギリのところに動作点が取られていました。一般 的に、5極管やビーム管では、プレート損失に比べて、スクリーングリッド損失はかなり低いの で注意が必要です。大きな変更は諦める事としました。すみません。これも、何をどう考えて計 算したのかさっぱりもってして覚えておりませんので、グラフのみでお許しください。EXCELシー トはどのシートが該当するのか分からなくなってしまいました。 ロードラインが引けて、各抵抗の値が決まったら続いて、コンデンサーの時定数計算を行い ます。動作点が変更になりましたので、カップリングコンデンサーとカソードバイパスコンデンサ ーを計算してみました。 時定数の計算式 R(kΩ)xC(μF)より 初段カップリング 330kΩx0.22μF=72.6 初段カソードバイパス 2.7kΩx220μF=594 後段カソードバイパス 0.33kΩx470μF=155.1 次段のカップリングコンデンサーは初段の真空管の内部抵抗とプレート抵抗の影響を受ける ので、計算がもう少し複雑になります。さらに真空管内部抵抗は、カソード抵抗の影響を受ける ので、この影響も含めて計算する形になります。 Rp'=Rp+Rkx(μ+1)より 12AX7の3定数を代入して、 Rp'=62.5+2.7kΩx(100+1)=335.2kΩ カップリング時定数 [{RbxRp'÷(Rb+Rp')}+Rg]xCc 後段カップリング [{330kΩx335.2kΩ÷(330kΩ+335.2kΩ)}+330kΩ]x0.22μF=109.1 各時定数が100までは離れていませんが、それに近い値で離れているので良しとします。こ のままでもいいのですが、実際に何Hzから減衰するのかカットオフ周波数も求めてみましょう。 定式に当てはめて計算します。 f(Hz)=159(定数)÷{抵抗値(kΩ)×容量値(μF)} f(Hz)=159(定数)÷{時定数}より 初段カップリング 159÷72.6=2.2Hz 初段カソードバイパス 159÷594=0.3Hz 後段カップリング 159÷109.1=1.5Hz 後段カソードバイパス 159÷155.1=1Hz となりました。 まあ、発振を起こさなければよしとして、後は実際に音だしをしてみてどうかというところでしょ うか。部品を購入して実装をする事にしました。増幅回路周りの抵抗も全て交換しました。多め に購入してきて、選別の上ペアリングをしました。
撮影時には既に基板は解体された後でしたのでイメージとしてとらえて下さい。 実際に音だしをしてみると、全体的に音のイメージが変わりました。ただし、変化の要因はカ ップリングコンデンサーの影響だと思われます。高音域が復活したのと、低音域における音の 曇りが一掃されました。残念ながらロードライン変更による影響は極小で、かえって豊かな帯 域が引っ込んでしまいました。環境の影響や部品の経年劣化等の影響に比べればこの程度 の変更はきわめて小さなものなのかもしれません。 度重なる改造で基板パターンの痛みが激しくとても実用的に使用できる状態ではなくなってし まいました。基板の使用は諦めて、ラグ組みのシングルアンプとして組みなおす事にしました。 その際のロードラインと時定数の決定用実験基板としてしばらくの間、部品の交換が続きまし た。
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