がれてしまい、筐体を振動させると音圧が変わってしまう状況になってしまいました。各部の電 圧を測定しているとパターン上の抵抗にて根元と末端で電圧が大きく異なるのも、前々から気 になっていました。コストを抑えるため筐体など比較的高価な部品は流用しつつ、シングルアン プの製作しました。 筐体をそのまま流用する事にしましたので、物理的な穴位置などは変更できません。真空管 の本数を変えることも新たなトランスを配置する事もできませんので、回路構成は基本的に踏 襲する事にしました。また、真空管のロードラインについても、今回はオリジナルから大幅な変 更をする事は避けました。現状、動かしても全く効果が無い事が実証されていましたので。 コンデンサーの時定数を中心に検討をします。増幅率と中域以上には満足しておりましたの で、低域を中心にEXCELにて計算を致しました。製作が去年の夏だったのですが、写真を確 認すると設計していたものと違う抵抗値などが入っています。直前になって気が変わったりとか したのでしょうか?設計値は下記の通りです。出力トランスの数値は公表されていませんの で、実測値とだいたいの想像で数値を代入しました。 計算式 時定数 RxC カットオフ周波数 159/時定数 (簡易計算) コンデンサー時定数
デカップリングコンデンサの時定数は真空管の内部抵抗(カソード抵抗の影響を含む)との合 計になります。 デカップリングコンデンサの時定数 (Rb+Rp')xC カソード抵抗影響を含むRp' Rp+Rk(μ+1) 出力段のカップリングコンデンサ時定数は初段の影響を受けます。 時定数 ((Rp'xRb/(Rp'+Rb))+Rg)xC Rp'及びRbは初段の値 出力管のスタガー比が十分に取れていないのが気になりますが。くどいようですが去年の事 なのでよく覚えていません。 写真から抵抗値等を読み取りロードラインを作図をしてみました。電源トランスを使いまわし とした為、大きな変更はありません。利得と出力も計算しましたが、ほぼ元回路と同じなので EKジャパンさんに怒られるのもあれなので、あえて載せる事を控えました。部品表や回路図に ついても同様の理由から控えています。 初段(東芝12AX7A) 出力管(7581A) 電源部はユニバーサル基板上に作成する事にしました。筐体のスペースが限られている為、 ラグに組むのには無理があった為です。キットのようにシルクプリントにしたがい部品を取り付 ける訳にはいきませんので、部品の配置から作図をします。この作業を手抜きしますと、配線 途中で修正を加えなければいけなくなります。また、完成時の見た目にも影響します。 電源部 dengen.pdf クリックするとダウンロードできます。 増幅部については、スペースの問題とカッコよく作りたかったので、今回はラグ板ではなく、端 子台を使う事にしました。 部品配置 7581Ahaichi.pdf クリックするとダウンロードできます。 電源基板から製作します。ユニバーサル基板上に配置図どおりに部品を組んでいきます。 FETは筐体放熱としますので高さに注意をして取り付けます。ユニバーサル基板との間に、長 さを調整して切断した真鍮の六角スペーサーを挟んであります。ほとんど一般的な部品で構成 してあります。平滑コンデンサーは、nichikonのKMGを使用しております。グレーの金属皮膜抵 抗は、KOAのディスコン品で、茶色の金属皮膜抵抗はDEALの1/2Wタイプです。酸化金属皮膜 抵抗はKOAのものです。その他、半導体部品は全てお店で普通に手に入るものを使いまし た。 筐体に実装したところです。ヒューズボックスはメンテナンスしやすいようにハンダ面に取り付 けました。B電源系のコンデンサはサイズが大きいので直接筐体に固定しました。 大物部品を取り付けます。電源トランスはTU-879より使いまわしのR-コアトランスです。狭い 筐体に収めるにはもってこいです。 出力トランスも使い回しです。ターミナルは金メッキ物に変更しました。入力RCA端子から初 段グリッドまでは距離があるため、モガミのシールド線としました。配線の静電容量の事を考え ると長距離引き回したくないところなのですが。 真空管のソケットは全て金メッキ物を使用しました。当時は全く気にしていなかったのです が、現在流通しているこうしたセラミックタイプのソケットの中には、絶縁性に疑問があるもの があるみたいです。また、接点の金属も注意が必要で、スプリング力を失って接触不良事故な どにつながることもあるらしいです。モールドの古いソケットを使うのは単にアンティークを意識 する為だけではないんですね。 先ずは、ヒータ用A電源とプレートのB電源を配線します。全て無酸素銅を使用したケーブル を使用しました。ただし、初段周りの信号ループだけは、オーディオ用線材を使用しました。 BELDEN社製の無酸素銅に銀メッキを施したタイプです。全ての真空管を直流点火しています ので、ヒータ配線はよじっていません。念のため、電源を入れて各部の負荷なしの電圧を計測 をしましたが、異常は無いようです。しかし、少し太い線材を使いすぎたようで、汚らしくなってし まいました。 部品配置が混んでいるので全ての部品の足には熱収縮チューブで絶縁を施しました。今回 入力Ch切替は廃止しました。画面上側の6Pのスイッチは、アンプへの入力とスルーの切替の みです。入力周りに無シールドの配線が存在するのを含め、スルーした信号を他の機器に入 力するか?と疑問が残るのですが、穴も残る事ですし・・・ 電源SWには、スパークキラーを取り付けて接点の保護をしてあります。スイッチの切替時に 発生する火花により接点が劣化するのを防いでくれます。ボリュームは、アルプス製のディスコ ン品です。おそらくまだ、ラジオデパート3Fに行けば手に入ると思います。初段ヒータ電源から パイロットランプ代わりの初段管ライトアップ用の赤色LEDと、ボリュームイリュミネーション用 の青色LEDの電流を分けてもらっています。ボリュームイリュミネーションは、LEDの角度など 製作にかなり試行錯誤をしたのですが、残念ながら写真等が残っていません。ボリュームのツ マミにドーナツ型に切断した散光アクリル板を接着して、LEDで照らしています。 配線を完了しました。極力、信号ループを意識して配線を施したつもりです。抵抗はKOAのデ ィスコン品の音響用金属皮膜抵抗を使いました。カップリングコンデンサーは、日立のフィルム コンデンサです。カソードのパスコンは、nichikonのFineGoldです。デカップリングコンデンサー は、日ケミのKMHです。位相補償用コンデンサには、アメリカ製の無誘導タイプのディップマイ カを使用しました。 期待と不安にドキドキしながらいよいよ電源を投入しました。各部の電圧を測ろうとテスター 棒をコンデンサーの足に近づけた時に事件が発生しました。出力管プレート電源用のディカッ プリングコンデンサーの正極が、アースに近い場所に配置されていた為に空中放電でショート をしてしまいました。運良くB電源用のヒューズを飛ばしただけで済みました。早速、対策として アース線を熱収縮チューブで絶縁しました。 現在我が家の主力機として十分に活躍してくれています。写真は、テスト時にロシア管の 6L6GCをつけていた時のものです。実機を使った真空管選別作業時にワニ口クリップを飛ばし て、ブリッジ整流器と中国管のEL34を燃やしてしまいました。それ以来、もったいなくてphilipsの 7581Aは箱にしまい込んだままでした。 コンデンサーのエージングが済むまでは、苦労が報われなかったかと焦りましたが、しばらく すると安定して稼動するようになりました。 最後に反省点をまとめてみます。同じような過ちを繰り返したくはありません。配線の線材を 選ぶ際におおよその電力で購入した為、かなり太いものを使った為に見た目に汚いです。ま た、狭い筐体に大量の熱源を配置してある為、放熱性にかけています。実際に、夏はエアコン を切る事がためらわれる程、筐体に熱を持ちます。抵抗器など選別して使ったのですが、左右 でバランスが多少異なります。 次は、完全差動型のアンプを作りたいなと思っています。真空管もだいぶ手に入れましたの で、古典管を使ったアンプも楽しいかもしれません。また、プッシュプルも1台持っておきたいも のです。夢は広がりますが、何年か後には・・・ (2007年10月18日追記) 左右のバランスが日を追うごとに悪くなってきました。久しぶりに裏蓋のネジを外しました。以 前から、各部の電圧は正常値を示していました。おそらく信号系だろうと予測をつけて半田ご てをあてました。NFB周り及び初段と出力段のグリッド付近を中心にコテをあてました。思惑は 的中し、バランスを取り戻しました。正常だった側の出力は変わっていないようですので、グリ ッド端子のハンダ不良と思われます。しばらくは、愛機として活躍しそうです。
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